ばーちゃんとのオセロ

俺2年前に初めて身近な親戚を失ったんだ。

ばーちゃんだった。

ほんとに初めてでよくわからなかった。

ばーちゃんが死んじゃった年の正月に、親戚で温泉に行ったんだ

俺は騒いだよ。飲んで飲んで騒いだ。ばーちゃんも楽しそうに笑ってた。

癌なんて嘘みたいに元気だった。

でも、いつもは親戚が集まったらいろんな人のとこに行って、世話してるばーちゃんがちっとも動かなかった。

その後もばーちゃんは元気になって退院したり、また熱が出て入院したりの繰り返しだった。

そのうちばーちゃんは病院からでてこれなくなった。

俺は家出てたから、めったにばーちゃんには会えなかった。

それでも、3日間の休みがあったら絶対に帰ってた。

昔はふっくらとして、なんでも受け止めてくれそうなばーちゃんが、見るたびに細くなってった。

薬に副作用で髪も薄くなってた。

それを気にしてばーちゃんはずっと帽子をかぶってた。

いつもは看病でだれか来てたけど、ある休みの時帰って、病院に行ったら、親戚のおばさんが居たけど、

ちょっとばーちゃん見ててくれるかい？って言われて俺はばーちゃんと2人になった。

何を話せばいいのかわからなかった。

それでもばーちゃんは、「オセロやるかい？」って無理して起きてきた。

俺は「ばーちゃん寝てたほういいよ」って止めたけど、「○○と一回オセロやりたくてねぇ・・・」と言って、

横の引き出しからちっちゃなオセロをだした。

俺は負けたよ。ばーちゃんには勝てなかった。

でも、ほんとは最後までできなかった。

ばーちゃんは、途中で、

「ばーちゃん疲れちゃった・・」と言って、俺の手を握りながら寝ちゃったから。

俺はばーちゃんの横で、ずっとばーちゃんの顔見てた。

何も考えられなかった。ばーちゃんが癌だなんて信じられなかった。

その日は帰ったけど、次の日来たら、また同じ状況になった。


※続きは後半で。


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ばーちゃんと2人になった。

そしたら･･･

ばーちゃん、また俺に「オセロやるかい？」って言ってきた･･･

「○○と一回オセロやりたくてねぇ・・・」

ばーちゃん、もうボケちゃってるんだ・・・ほんとに泣けた。

俺は動けなかったよ。その場で子供みたいに泣いた。

その時ちょうど母親が来たから、「ばーちゃんちょっとごめん」って言って病院の屋上まで走った。

涙を拭いて、病室に戻った俺は、「ばーちゃん、またオセロやろうね」って言うと

ばーちゃんは「気をつけて帰るんだよ」とだけ言ってくれた。

俺は自分の家に帰った。

それがばーちゃんに会った最後だった。

一週間後のその日、俺は忙しくてメールも電話もできずにいた。

ひと段落ついてから、携帯を手に取ると、数件の着信とメール。

1通目のメールを読んで俺は崩れ落ちた。母親からだ。

「ばーちゃん、14日11時42分逝きました。忙しいだろうけど、帰ってきてあげてね。」

もう急いでも間に合わない。それでも急いだ。高速を飛ばしまくった。

俺が着いて、ばーちゃんに会った時、ばーちゃんは今までで一番綺麗な顔をしてた。

母親が、「みんな近くにいたからね。間に合ったんだけど、アンタには昨日は連絡しなかったんだよ。」と俺に言った。

俺は「なんでだよ！言えよ！」とばーちゃんが寝てる横で叫んでしまった。

母親は俺を諭すように言った

「だれが言ったと思ってんの？ばーちゃんだよ？間際になっても、アンタのこと心配して、事故っちゃいけないと思って 言ったんだよ！？

『○○には落ち着いてから連絡してね･･･車危ないから･･･』って・・・」

俺は言葉が出なかった。

オセロのときは前の日のことも覚えてなかったのに･･･

その日はずっと、ばーちゃんの横に居た。線香の番をずっと一人でやった。だれにもゆずらなかった。

横に居たけど泣けなかった。

葬式が始まる前、俺はばーちゃんのおでこを綺麗に何度も拭いてあげた。

俺は立ち尽くした。火葬場で。

ありえないじゃないか。ばーちゃんをあんな暑い部屋にいれるなんて。

どんどんどんどんばーちゃんが奥に進んでく。

ようやく実感した。

イトコの小さい子が俺に泣きついてきて、俺は一緒に泣いた。

一緒に外に出て煙突から出る煙を見た。

ばーちゃん、いっつもいっつも心配ばかりかけててごめん。

ﾎﾝﾄに事故には気をつけるよ。

高校、大学、って合格できたとき、一番喜んでくれたのは、ばーちゃんだった。

ばーちゃんの煮物旨かった。

毎年正月、百人一首の読み札いっつも読んでくれた。

最後の年はばーちゃんが読んで無かったから俺はやる気しなかったよ。

ばーちゃん、ありがとう。ほんとにありがとう。

これからも心配かけるかもしれないけど、見守っててください。



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